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インフルエンザ予防と口腔ケアについて ~最近の研究結果から~

 今年は例年よりも早くインフルエンザの流行が始まり、尚且つ例年以上のインフルエンザの大流行が予想されています。我が家の子供達もやっと予防接種を受けられホッとしているところです。

 さて、過去の疫学調査などで、適切な口腔ケアの実施によりインフルエンザの発症が減少するという報告があり、院内新聞でもご紹介させて頂いたことがありましたが、その科学的根拠やメカニズムについては不明な部分が多くありました。例えば一つの要因として、口腔内細菌の出す酵素や毒素には粘膜組織を破壊し細菌やウイルスの体内への侵入を容易にさせてしまうものがあり、それにより感染が生じやすくなるのでは?と漠然と考えられていたりしていましたが、ここ数年の間に研究が進んだことにより多くの知見が得られ、インフルエンザと口腔ケアの関係性がはっきりとわかるようになってきましたのでご紹介させて頂きたいと思います。

 わが国では、毎年約1000万人がインフルエンザウイルスに感染し、そのうち乳幼児や高齢者を中心に約1万人が死亡すると言われています。身近ではありますが、決して侮ることができない感染症だということはご存知の通りです。
 そして、以前より、このインフルエンザウイルスは常在細菌が存在する口腔や鼻腔から感染することから、ウイルス、常在細菌、宿主(人間)の三者に密接な関係性があるのではないかと考えられてきました。

 通常インフルエンザウイルスが我々の体内に入ると、ノイラミニダーゼという酵素(NA)を産生し、その酵素の種々の働きにより我々の体の細胞内で増殖をしていきます。タミフルやリレンザ等のインフルエンザ治療薬はノイラミニダーゼ(NA)阻害薬であり、このノイラミニダーゼ(NA)を阻害することで体内でのインフルエンザウイルスの増殖を抑えるというメカニズムを持っています。つまり、インフルエンザウイルスが我々の体内で増殖し発症するためには、ノイラミニダーゼ(NA)という酵素の存在がとても重要になるのです。

 ところが最近の研究により、口腔や鼻腔に存在する常在菌の中にはこのノイラミニダーゼ(NA)と同じ働きをするタンパク質を産生する細菌が多数いることがわかってきました。つまり口腔内の細菌がインフルエンザウイルスの感染、発症そのものを手助けしてしまうということになります。更に、この口腔内細菌由来のノイラミニダーゼ(NA)の中には、抗インフルエンザウイルスによるノイラミニダーゼ阻害作用を受けないものがあり、その結果、タミフルやリレンザ等のインフルエンザ治療薬が効きにくくなるということもわかりました。
 また、唾液の中にはインフルエンザウイルスの感染性を抑制する物質が存在するものの、細菌やウイルス由来のノイラミニダーゼ(NA)によりその抑制効果が阻害されてしまうこともわかってきました。

 これらの結果から、しっかりとした口腔ケアを行い口腔内の衛生状態を保ち、口腔内の細菌の減少を図ることで、インフルエンザウイルスによる感染やインフルエンザの発症をしにくくさせることができ、また発症した後インフルエンザ治療薬を使用する際にも治療薬の効果を発揮させることができるということがわかります。
 最初にも書きましたように、インフルエンザは乳幼児やご高齢の方、持病をお持ちの方などで重篤化しやすいので注意が必要です。

 年末年始は、買物や帰省・旅行などで人の移動が激しくなり、インフルエンザも蔓延しやすくなります。休息や栄養を充分に摂り、予防ワクチンの接種や手洗いうがい、室内や口腔内の乾燥防止などの基本的予防に加えて、適切な口腔ケアを行って頂き、インフルエンザ予防の一助にして頂ければと思います。