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卒乳が遅れると、からだの発達やむし歯に影響する!?

日頃、患者さんから、
「まだ授乳がやめられないんです。」とか「まだ1歳なのに、むし歯ができてるような気がするのですが・・・。」といったご相談を受ける事があります。
そこで今回は、卒乳の時期と体の発達やむし歯の関係についてお話をさせて頂きたいと思います。


理想的な卒乳の時期はいつ頃?

赤ちゃんの成長には個人差があり、卒乳のタイミングに対する考え方もいくつかありますが、厚生労働省の指針では生後5~6ヶ月後から離乳を始め、生後15~18ヶ月位までに卒乳するのが理想とされています。

参考 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」 平成19年 ←(クリックするリンクします。)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/s0314-17.html

それはなぜかというと、適切な時期に卒乳を完了するということが、次の2つの点で非常に大切な意味を持っているからなのです。


なぜ卒乳の時期が大事なの?

まず第一点目は、卒乳時期の遅れが、その後の「食べたり飲んだりする能力の発達」に影響を与えるということにあります。

普段、私たちが物を食べたり飲んだりする能力や機能、その一連の動作は、元から生まれ持った能力ではなく、後から学習して得る能力(成熟型摂食・嚥下)です。
一方で、赤ちゃんが授乳する一連の動作は哺乳反射と呼ばれ、生まれつき備わった原始反射による動作(乳幼児嚥下)とされています。
ですから、乳幼児嚥下から成熟型摂食・嚥下に移行する為には、身体の成長発育に合わせて適切な時期にトレーニングを行う事が必要であり、それがまさに生後5~6ヶ月の離乳開始から生後15~18ヶ月の時期になるのです。
というのは、この時期は、哺乳反射が消失し、前歯がはえ始め、口腔内の形態や舌の位置が成熟型の咀嚼に適した状態へと変化していく正に体の変化期にあたるからなのです。。
逆にこの時期を逸してしまうと、あとからトレーニングしても咀嚼能力がなかなか身につかないこともありますので要注意です。

次に第二点目として「卒乳が遅れるとむし歯になりやすくなる」という事が挙げられます。

母乳には、乳糖(ラクトース)という糖分が含まれていますが、母乳中の乳糖はむし歯の原因となる菌であるミュータンスレンサ球菌の活動を活性化させず、むし歯を作りにくいという研究結果があります(なぜむし歯をつくりにくいのかという原理についてはここでは省略します)。
しかしながら、離乳食がはじまりショ糖を摂取するようになると、口の中でショ糖と母乳が混在する状況となります。
そして、このショ糖と母乳が混在した状況が、非常にむし歯をつくり易くするとされています。

ですので
「歯がはえるまでは母乳や離乳食の与え方と口の清潔に神経質になる必要はないが、前歯がはえてからは歯の表面に食渣が残らないように清潔に保つのが大切である。」と提言されています。

参考 「母乳とむし歯-現在の考え方」 小児科と小児歯科の保健検討委員会 平成20年 ←(クリックするリンクします。) 
http://www.jspd.or.jp/contents/main/proposal/index03_03.html#pro03


本当に、卒乳が遅れるとからだの発達やむし歯に影響するの!?

昨年、私も会員である日本小児歯科学会会誌において、卒乳とむし歯の関係についての研究が報告されておりました。
それによりますと、ある保健所で実施された1歳6ヶ月児歯科健診では、
健診した小児のうち、まだ授乳している小児の割合が32.8%、その授乳している小児の中でむし歯に罹患している割合が21.9%、既に卒乳している小児でむし歯に罹患している割合が6.8%という結果が出たとのことでした。

また、授乳している小児では、ミルクよりも母乳を飲んでいる小児が多く、就寝時や夜中に飲ませることが多いとのアンケート結果となったようです。

逆に、卒乳している小児では、自然に卒乳したというケースが、欲しがっても我慢させたというケースよりも多く、幼児食をしっかり食べるようになったり、子供が欲しがらなくなったという理由で卒乳できたという回答が多かったようです。

そして、研究の結論として、
「卒乳は小児の摂食機能の発達に合わせた保育によりスムースに行えるのではないかと推察され、また、1歳6か月までに卒乳していないと、う蝕(むし歯)に罹患する危険性が高まることが示唆された。」とされていました。

参考「卒乳に関する保護者の意識調査」 鶴見大学歯学部小児歯科学講座、大田区保健所蒲田地域健康課 
小児歯科学会雑誌 54(4) 2016



他の国ではどうなの?

WHO(世界保健機関)とUNICEF(国連児童基金)では、2歳以上までの授乳を勧めているようですが、これは乳児死亡率の高い栄養状態の悪い国や地域を念頭にしたものなので、日本では全く当てはまらないと考えられます。

でも、なかなかやめられなくて・・・。

とは言うものの、「子供の気持ちを落ち着かせるために、ついつい・・・」とか「子供が欲しがるのでなかなかやめられない…」といったご事情もあるかと思います。
「絶対に」「何が何でも」という考え方は、お母さんにとっても、お子さんにとってもご負担となってしまいかねませんが、卒乳時期と
体の発達、むし歯の関係について知って頂き、少しでも育児のヒントにして頂ければと思います。

当院では、できる限り医学的根拠に基づいた正しい情報の発信を行っていきたいと考えておりますので、何かご質問等がありましたら、安心してご遠慮なくお尋ね下さいますよう宜しくお願い致します。